残存歯が少ないと死亡リスクが高いことが明らかに
研究の対象は、26市町村に在住する65歳以上の高齢者。2010年、2013年、2019年における日本老年学的評価研究の15,905名分の縦断データおよび、日本老年学的評価研究と紐づけた32,827名分の2019年の介護保険データを使用した。
また、口腔の健康状態は、以下の5つに分類した。
① 20歯以上
② 10~19歯で歯科補綴あり
③ 0~9歯で歯科補綴あり
④ 10~19 歯で歯科補綴なし
⑤ 0~9 歯で歯科補綴なし
2010年の人口統計学的情報等を考慮した上で、2013年の口腔の健康状態と、2019年の身体や認知・精神的健康、主観的ウェルビーイング、利他的行動、健康行動などを含む35の健康とウェルビーイングの指標との関連を検証した。
その結果、歯が20本以上ある人に比べ、20本未満の人は6年後の死亡リスクが10~33%高く、身体的な機能障害のリスクが6~14%高いことが明らかになった(図1)。
さらに、歯が20本未満の人は、外出の頻度が少なく、野菜や果物を食べる量が少ない傾向にあった。また、残存歯が0~9本で歯科補綴を使用していない人は、重度の身体的な機能障害を有する可能性が高いかつ知的活動が少なく、絶望感を感じる割合が高いことが明らかになった(図2)。
このことから、65歳以上の高齢者において、残存歯が20本以下であることは死亡および身体機能障害リスクの上昇と関連していたことがわかった。
また、口腔の健康状態を良好に保ち歯科補綴治療により回復させることは、死亡や機能障害リスクの低減だけでなく、ウェルビーイングの増進に寄与することも示唆された。
今回の研究で、口腔の健康は、死亡率や身体的機能障害リスクの低減、知的能力の維持、外出頻度、食生活の維持に寄与する可能性があることが明らかになった。
監修者情報
院長 加藤 晴康
大阪歯科大学に入学し、歯科医師免許取得。
卒業後は、口腔外科にて研修後、東大阪本多歯科医院にて約10年本多正明先生に師事し、総合診断、補綴を徹底的に学び研究・教育に従事。